煌夜と出会ってから1週間が過ぎた。2人で毎日、朝から晩まで、町の周囲のモンスターを狩っては換金してきた。そろそろ剣士階級試験も受けられそうだ。
2人で狩るのにも随分慣れてきた。だが、町からもう少し離れるとなると、どうしても乾か坤の魔術師が必要となる。 登録しに行った日から、日々斡旋所に通ってはいるが、未だに見つかっていない。他の職も、回復支援職のいない初心者パーティには、なかなか寄り付かないようだ。焦っても仕方のないことなのだが、早く冒険に出かけたいという思いが強くて、毎日がもどかしい。 セイは今、宿屋の一室にいる。角部屋で、日の入りがよい。綺麗に片づけられた、清潔な部屋だった。 煌夜は買い物に行ってしまった。一緒に行くと行ったのだが、魔術師の消耗は激しいだろうからと、宿屋に置いていかれたのだ。 セイは虚空に話しかけた。 「ねぇ、ウンディーネ」 すると、水色がかった、小さな人型のようなものが現れた。大きさは人の頭ほどで、まるで水が人型を模して空中に浮かんでいるようだった。 『なぁに?』 セイの頭の中に、直接声が響く。 小さなそれは、宙で軽くステップを踏んでいる。くるくると回る度に輪郭が揺れた。光の当たりようによっては、ほとんど無色透明に見える。 「乾坤の魔術師は少ないの?」 『あら、もう泣きごと?』 笑い声が聞こえる。 ウンディーネの声を聞いていると、不思議と心が落ち着いてくる。幼少の頃から、ずっと一緒にいる所為だろうか。 「そうではないけれど…この国にいると、決心が鈍りそうなんだもの。早く出たいの」 『そうね……いいことを教えてあげるわ、星奈』 ウンディーネが、何かを感じ取るように顎をあげた。止まっていても、少しずつ漂っているため、表情はよく見えないが、眼をつぶっているようだ。とはいえ、彼女ら――精霊は、その“眼”で物を見ているのではない。人と同じような仕草をして、遊んでいるだけだろう。 『今すぐに斡旋所に行くといいわ。1週間前のあなたたちのような子がいるわよ』 |