本章




B




 慌てて宿屋を出ると、ちょうど買い物から帰ってきた煌夜と鉢合わせした。

「うわっ セイ、どうしたんだ?」

 煌夜は、セイの形相に驚きながら、落としかけた荷物のバランスを取り直す。

「あぁ、煌夜。よかった、今あなたを探しに行こうと思っていました」

「俺を? 何かあったのか?」

 煌夜の顔を見て、少し落ち着いたようだ。

「はい。でも、早いですね。買い物もう終わったんですか?」

「んーん。なんか、戻らなきゃって思って…あれ? なんでだっけ…?」

 セイは、ちらりとウンディーネを見た。ウンディーネが親指を立て、グーサインをしている。
 煌夜には、ウンディーネは見えていないし、声も聞こえていないはずだ。おそらく、虫の知らせのようなことを意図的に起こしたのだろう。精霊は時に、人には計り知れないことをする。

「…煌夜、斡旋所に行きましょう。僕も、行かなきゃいけない気がするんです」








←←本章(2)へ  ||  本章(4)へ→→