「! それを早く言いなさいよ!」
急いで上がる。 ウェルナキアがそっぽを向きながら、タオルを手渡してくれた。それを体に巻きながら、ついでに剣も受け取って、前へと出る。すでにモンスターが、ずらりと並んでいた。 「何秒?」 「え?」 「詠唱に、何秒かかるの!」 とてもではないが、一人で倒せる数ではない。しかも、森の中では、モンスターも強くなるとランティアが言っていた。ここはウェルナキアの魔法に頼るしかない。 「三十秒ほどです」 「三十秒ね…」 耐えられるだろうか。彼を守りながら。 だが、やらねばなるまい。 「炎はダメよ!」 「分かっています!」 ウェルナキアが集中に入るのを確認して、近くのモンスターに挑みかかる。 三十、二十九、二十八…… 「封印されし者」 二十七、二十六、二十五…… 「その封印より舞い出る力を、我の力へと変換せよ」 二十二、二十一、二十…… ―――早くっ 「我は、シトラス=ヘンデルハフト」 十、九、八…… ―――早く、早く! 「我が名に応えよ、シルフ!」 零。 風が、舞い出る。 グネグネと揺れる草物のモンスターを切り刻んでいく。 「………」 油断はしない。すべてが、倒れるまで。 少しして、ウェルナキアが小さく息を吐くのが分かった。 終わった。 緊張感から解放される。戦闘で乱れたタオルを直そうと、剣を脇に突き刺して―― 「! いけない!」 「?」 「フィリさん、戻りましょう。ラントさんが危ない!」 「!」 そうだ、ランティアは今、一人だ。 いくら剣術に長けていても、もしあれだけの数に囲まれでもしたら…! 私たちは、荷物をひっつかんで、すでに日の沈んだ森を走りだした。 |