第3章 密やかなる破片




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「! それを早く言いなさいよ!」

 急いで上がる。
 ウェルナキアがそっぽを向きながら、タオルを手渡してくれた。それを体に巻きながら、ついでに剣も受け取って、前へと出る。すでにモンスターが、ずらりと並んでいた。

「何秒?」

「え?」

「詠唱に、何秒かかるの!」

 とてもではないが、一人で倒せる数ではない。しかも、森の中では、モンスターも強くなるとランティアが言っていた。ここはウェルナキアの魔法に頼るしかない。

「三十秒ほどです」

「三十秒ね…」

 耐えられるだろうか。彼を守りながら。
 だが、やらねばなるまい。

「炎はダメよ!」

「分かっています!」

 ウェルナキアが集中に入るのを確認して、近くのモンスターに挑みかかる。
 三十、二十九、二十八……

「封印されし者」

 二十七、二十六、二十五……

「その封印より舞い出る力を、我の力へと変換せよ」

 二十二、二十一、二十……

―――早くっ

「我は、シトラス=ヘンデルハフト」

 十、九、八……

―――早く、早く!

「我が名に応えよ、シルフ!」

 零。
 風が、舞い出る。
 グネグネと揺れる草物のモンスターを切り刻んでいく。

「………」

 油断はしない。すべてが、倒れるまで。
 少しして、ウェルナキアが小さく息を吐くのが分かった。
 終わった。
 緊張感から解放される。戦闘で乱れたタオルを直そうと、剣を脇に突き刺して――

「! いけない!」

「?」

「フィリさん、戻りましょう。ラントさんが危ない!」

「!」

 そうだ、ランティアは今、一人だ。
 いくら剣術に長けていても、もしあれだけの数に囲まれでもしたら…!
 私たちは、荷物をひっつかんで、すでに日の沈んだ森を走りだした。








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