第3章 密やかなる破片




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 森の中を歩く。
 枯れ葉が鳴らすカサカサという音が、緊張感を刺激する。
 今のところモンスターの気配はない。だが、気配を消している場合もある。油断は出来ない。
 そもそも、何故森の中を進むことになったのかというと、これが王都への一番の近道だからだ。
 俺はまだいい。森にはよく出入りしていたから、手慣れている。
 だが、彼らは――

「きゃっ」

 フィリーネがまた転んだ。もう何度目だろう――立ち止まり、手を差し延べる。
 森を通ることを提案された時、フィリーネは意気揚々と承諾した。
 それなのに、この有様。
 言い出しっぺである精魔使の少年――ウェルナキアは、歩きにくそうな服を来ている割に、しっかりとした足どりでついて来ていた。やはり、相当旅慣れているようだ。
 あの後――少年がゼリー状のモンスターから俺たちを助けた後、少年はホーリィグレースの名を口にした。



「――って、知りませんよね…はぁ」

 少年は、肩を落としてため息をついた。分かってはいるけれど一応聞いた、そんな雰囲気だった。
 だが、

「お前も…なのか?」

 俺たちは、ただ、この偶然に驚いていた。
 いや、偶然ではないのかもしれない。
 すべては、石の導くままに…








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