炎だ。
それは、純粋に緋い炎だった。俺たちの周りを取り囲んでいたモンスターを一気に消すほどに、広大で強大な。 「…………」 俺もフィリーネも突然の出来事に、あんぐりとしていた。今日は、色々なことがいきなり訪れる日なのかもしれない。 「大丈夫ですか?」 その声に振りかえると、小さい人影がこちらに駆け寄ってきていた。 ―――子供!? 手足が短く、身長もまだ低い、十二、三歳ほどの少年だった。 「……君が?」 「はい。よかった、無事そうですね」 笑顔が可愛らしい。 少年は、魔法使いが好んで着るローブを身に纏っていた。少し大きいようで、腕を捲り上げている。 「ああ、ありがとう。おかげで助かった」 「いいえ。ちょうど通りかかったものですから」 この少年が先ほど使った力、あれは、ただの魔法ではないはずだ。良くは聞こえなかったが、あの呪文、あれは精霊魔法の呪文のはず。 ―――こんな子供が… 精霊魔法使い――精魔使は、その数は少なく貴重だ。誰しもがなれるわけではなく、精霊と波長が合う、つまり精霊に気に入られなければ使うことはできない。また、消耗も魔法使いの比ではないとか。 ―――こいつ、いったい…… 何者なのだろう。 興味…ではない。もちろん、不審感などでもなく。何かが、 「…君、一人か? 旅を?」」 そうだ。 旅をしているなら何か情報を持っているかもしれない。 「はい。もう慣れているので、一人でも割と平気ですよ」 ならば、ここは… 「何かお礼をさせてほしい」 「お礼…ですか?」 「ああ」 話を聞く機会がほしい。 「じゃあ…」 少年は少し考える素振りをしてから、ずっと絶やさなかった笑みを深めて言った。 「ホーリィグレースについて、あなた方の知っていることを教えてください」 |