第2章 思い出の始まり




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 炎だ。
 それは、純粋に緋い炎だった。俺たちの周りを取り囲んでいたモンスターを一気に消すほどに、広大で強大な。

「…………」

 俺もフィリーネも突然の出来事に、あんぐりとしていた。今日は、色々なことがいきなり訪れる日なのかもしれない。

「大丈夫ですか?」

 その声に振りかえると、小さい人影がこちらに駆け寄ってきていた。

―――子供!?

 手足が短く、身長もまだ低い、十二、三歳ほどの少年だった。

「……君が?」

「はい。よかった、無事そうですね」

 笑顔が可愛らしい。
 少年は、魔法使いが好んで着るローブを身に纏っていた。少し大きいようで、腕を捲り上げている。

「ああ、ありがとう。おかげで助かった」

「いいえ。ちょうど通りかかったものですから」

 この少年が先ほど使った力、あれは、ただの魔法ではないはずだ。良くは聞こえなかったが、あの呪文、あれは精霊魔法の呪文のはず。

―――こんな子供が…

 精霊魔法使い――精魔使は、その数は少なく貴重だ。誰しもがなれるわけではなく、精霊と波長が合う、つまり精霊に気に入られなければ使うことはできない。また、消耗も魔法使いの比ではないとか。

―――こいつ、いったい……

 何者なのだろう。
 興味…ではない。もちろん、不審感などでもなく。何かが、懐かしい・・・・

「…君、一人か? 旅を?」」

 そうだ。
 旅をしているなら何か情報を持っているかもしれない。

「はい。もう慣れているので、一人でも割と平気ですよ」

 ならば、ここは…

「何かお礼をさせてほしい」

「お礼…ですか?」

「ああ」

 話を聞く機会がほしい。

「じゃあ…」

 少年は少し考える素振りをしてから、ずっと絶やさなかった笑みを深めて言った。

「ホーリィグレースについて、あなた方の知っていることを教えてください」








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