僕が陛下と初めてお会いしたのは八年前、陛下の神輿の前に突如現れたそうだ。立派な身なりをしてはいるが、服は所々破れ、煤や血で汚れていた。意識も失っていて、かなり疑わしい状況だった。だが陛下はすぐに自分の神輿に乗せるよう命じ、僕は助けられた。目を開けると陛下の心配そうな緋色の瞳があって、その取り込まれそうな美しく優しい色が、僕の記憶の始まりだった。
「何か、見つかった?」 どこまでも温かいその御声。親も兄弟もない僕に、その感覚を教えてくれる。 「はい。石を持つ者を二人」 「――もしかして、薄紫の…」 「はい、手紙も所持しておりました。しかし、何も知らないようです」 「……、………そう、か…」 「…?」 何か、可笑しな返答をしただろうか。それとも、何かあったのだろうか。珍しく歯切れが悪い。 「一人は気功使いでした。途中モンスターとの戦闘で気功を使い、倒れましたので、今は医務室に寝かせてあります」 「…わかった。体調が良くなるまで休ませなさい。しかし、キア」 「はい」 「ホーリィグレース国探しは思った以上に難航しているようだね」 「…はい」 思わず目を伏せる。我儘を聞いてもらっているのに、まだ何も掴めていない。王の傍にいることを許されながら、傍を離れてまで探しているというのに。 「思いつめなくていいよ、キア。私はお前が望むように、お前の記憶が戻ることを願っているのだから。そこでね、キア。助っ人を付けてあげるよ」 「え――」 「来なさい、サキ」 「!」 |