第2章 思い出の始まり




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 噴水広場の小道の先には、ちょうど良い広さの空間があった。この辺りは人通りも少なく、話をするにはもってこいの場所のようだ。
 俺は、少しよれた手紙を少女に渡し、変わりにしわ一つない綺麗な、同じく淡い藤色の手紙を受け取った。
 その手紙の一行目には…

―――イキシア=フォイアー……

 知らない名前。
 だが俺は、知っていた・・・・・

「内容は、ほとんど同じみたいね」

「…ああ」

「これ、いつもらったの? 私は一、二週間前だけど…」

「…届いてすぐに村を出たから、俺もだいたいその位だ」

 頭の中で数える。
 一部記憶がかけているけれど。

「村? あなた、どこから来たの?」

「…………」

 ただの好奇心だろう。ならば、答えることなど、出来るはずもない。
 今は亡き、村の名など…

「答えたくないなら別にいいわ。これからどこに行くの?」

「…王都に行こうと思っている」

 こちらの沈黙に訝ることなく話し続けるフィリーネに虚をつかれる。
 特に興味もないのか、それとも…
 心が、安まる。

「王都…ね。そうね、二人なら何か見つけられるかもしれないわね」

 二人? まさか…

「ちょっと待ってなさい。すぐに戻るわ」








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