第1章 夢の終わり




F




 白。一面の白。何も見えない。
 ふわりふわりと。寄り添うように。あるいは、離れ行くように。
 闇夜の中。一際美しく、月光を反射し続ける。雫を、流し続けても。

 その只中を、漆黒に染めながら。
 いつまでもそこにあるはずのものに目を凝らす。

 けれど、もう何も見えなくて。
 近づいても、遠ざかっても、もうそこには何もなくて。
 虚空を掴むばかりの手は、もう何も触れられない。
 こぶしを強く握りしめても。歯をきつく食いしばっても。
 あふれ出るのは、後悔という無色の幻想ばかりで。

 すべては絵空事であったかのように。いつかは消える、蜃気楼のように。
 後ろ髪を引かれても、もうそこには戻れる夢などないのだから。

 俺は星を仰ぎ見る。
 空虚な思いが零れ落ちないように。
 これから進む道を問うかのように。
 その泡沫にすがるように。
 たとえ砂上の楼閣でも。
 それでも問い続ける。

 何もかもが零れてしまいそうで、もう前を向いていられないから…









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