白。一面の白。何も見えない。
ふわりふわりと。寄り添うように。あるいは、離れ行くように。 闇夜の中。一際美しく、月光を反射し続ける。雫を、流し続けても。 その只中を、漆黒に染めながら。 いつまでもそこにあるはずのものに目を凝らす。 けれど、もう何も見えなくて。 近づいても、遠ざかっても、もうそこには何もなくて。 虚空を掴むばかりの手は、もう何も触れられない。 こぶしを強く握りしめても。歯をきつく食いしばっても。 あふれ出るのは、後悔という無色の幻想ばかりで。 すべては絵空事であったかのように。いつかは消える、蜃気楼のように。 後ろ髪を引かれても、もうそこには戻れる夢などないのだから。 俺は星を仰ぎ見る。 空虚な思いが零れ落ちないように。 これから進む道を問うかのように。 その泡沫にすがるように。 たとえ砂上の楼閣でも。 それでも問い続ける。 何もかもが零れてしまいそうで、もう前を向いていられないから… |